紹興酒の甕を保管している地下ピットから引き揚げようと思ったのですが、思ったより重くまた地下ピットに下ろさなければ ならないので写真を撮ってきました。その他5種の酒を並べました。中国における酒の歴史は、紀元前2070年頃から紀元前 1600年頃まで続いた、中国最古の王朝といわれる禹を始祖とする夏王朝が始まりとされています。 その前の新石器時代の後期には酒が醸されていたのではないかという説もありますが本当のところは分かりません。 紀元前6000年頃の遺跡の発掘品でも酒造りの痕跡があったそうです。 日本では縄文時代になりますが、その夏王朝が実在していたかどうかも分かっていません。 中国酒の製法上の分類は、醸造酒、蒸留酒、混成酒で、流通上の分類では、白酒、黄酒、薬酒・配製酒、啤酒(ビール)、 葡萄酒及び果実酒の5種になります。国土は広く多種多様の酒類が生まれています。 |
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紹興加飯酒(会稽山)/17% - 日本では中国の酒というと紹興 酒が有名で、老酒イコール紹興酒と混同されますが黄酒の一種で す。老酒とは甕や壺で3年以上貯蔵された黄酒に与えられる尊称 です。紹興老酒、上海老酒、福建老酒、山東老酒等があります。 その黄酒全体をとっても白酒の30分の1の流通量しかありませ ん。ビールの9分の1、ワインの2分の1と少なく、紹興酒を含 む黄酒は中国料理の風味向上の調味料として広く使われる存在な ので、飲用としての消費は更に少なくなります。上海の南西方に 位置する紹興市で製造されます。この甕の容量は10リットルで 一升瓶にすると5.6本になります。陳3年です。長~~い年月貯蔵 している間に2011年の東日本大震災が発生して一晩家に帰れず、 ようやく家にたどり着いたら水道管が割れていて水が噴き出して いました。20時間近く噴き出したままの間に地下ピットはプール になっていて、5日間かけて水は汲みだしましたが、その間水没 |
した甕の中の紹興酒が飲用に適しているかどうか、それこそ蓋を 開けてみないと分かりません。 正月の餃子パーティー用に購入しましたが、消費されず今日に至っています。製法上では淋飯酒と攤飯酒に分類され、品質面では元紅酒、加飯酒、善醸酒、香雪酒に分類されます。これは加飯酒で、原料は(もち米、麹、侵米水、水、淋飯酒母、米酒)で、甘口で飲みやすい酒です。氷砂糖やザラメと共に供されることがありますが、通常の黄酒では粗悪品か品質劣化が進んでいる場合以外は、糖分を加えて飲むことは考えられません。淋飯酒は簡易に造る速醸酒なので飲用にする場合は糖分が必要かもしれません。開け方は、先ず甕の上部を覆っている石膏をノミとハンマーで割り除去します。石膏の下からは蓮の葉で蓋され、その押さえに置かれた中蓋の皿が出てきます。それを丁寧に取り除けば琥珀色の酒が汲めるようになります。 |
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右から、これも紹興加飯酒(塔牌)/18% - 容量は1.625㎖です。 陳何年かは不明です。蝋で封をしてあり中蓋はコルクです。 現在この製品は販売されていないようです。次が、上海老酒(石庫 門)/10% - 上海唯一の黄酒酒蔵の製品です。陳5年で、蜂蜜、枸 杞、干梅を使いリキュールに近い酒です。中央は、桂花陳酒/16% 白ワインにキンモクセイの花弁と蕾を3年間浸漬した秘酒で、楊貴 妃にも愛された酒だといわれています。幻の美酒と言い伝えられて いましたが、1956年に酒造法の文献が北京で発見され新たに造られ 始めた酒です。次が、貴州老窖酒/38% - 白酒で、原料は水/高 粱/小麦です。白酒とは紹興酒を含めた黄酒全体の30倍ほど消費さ れている最も日常的な酒です。白酒はその匂いの特徴を「香型」と 呼び、5種にタイプ分けしています。すべての白酒はこの「香型」 のどれかに属します。[醤香型] [清香型] [濃香型] [米香型] [複香 型]です。貴州老窖酒は茅台酒と同じ[醤香型]です。 窖は土を掘っ て作った巨大な穴で、その中に原料と大曲と呼ばれる麹を入れて土 をかぶせて発酵させる製造法です。水分のない固形物が入りますの で、桶や樽や瓶やタンクは必要ありません。個体発酵と呼ばれる中 国独自の極めてまれな製造法です。老窖の老は、日本では老いると いうネガティブな意味ですが、ここでは年古りたというくらいの |
敬称で使われているようで至極一般的に使われているようです。 米老鼠とはミッキーマウスの事だそうです。日本人には馴染みの ない独特な香りの酒で、酒度も高いものが多いです。 優雅で柔らかい香りを持ち美味しいのですが、餃子パーティーの 時に白酒を美味しく飲むのは私一人だけで、一般的にはとっても 飲みにくいようです。一番左は貴州茅台酒/53% - 白酒で、 原料は水/紅高粱/小麦です。スコッチウィスキーやフランスの コニャックと並ぶ世界三大銘酒の一つであり、中国の伝統的な [醤香型]の国酒です。茅台の職人技は国家機密として保護される ほどで、長年にわたって蓄積された独自の伝統的な醸造技術から 生まれます。高温多湿な気候の土地で、やはり窖で発酵させ、 蒸し、発酵と蒸留を繰り返す「九蒸八酵七取酒」という独自の製 法です。全工程に5年近くかかる古酒もあります。国賓級のおも てなしなど外交の場において多く用いられています。 1972年に日中国交正常化式典の宴席で、田中角栄首相と周恩来 総理が茅台酒で乾杯したことから、日本でも広く知られるように なりました。きめ細やかな上品さを持ち、香り高く味わい深い 飲んだ後も香りが口に残る醤香型の代表的な白酒です。 |
2023.2.7-作成 長尾